犬小屋

舞台の感想

2.5から宝塚までいろいろ見た感想など

【舞台】タイタニック

10/19 昼公演 シアタードラマシティ

 

前回はいまいち興味が持てずスルーしたのですが再演の評判がとてもよく見なきゃ後悔するかもなあとチケ難でしたが前日に運よく譲渡してもらえたので行ってきました。今月三回目のドラマシティ。客席が満席でホッとしました。いやポラリスがガラガラすぎて、左右がずっと空席だったりしたのでこれ舞台からすごく目立ってるんじゃ…と気が気じゃなくて落ち着いて鑑賞できなかったんで。客層は意外と年配の男性が多く、女性も幅広い年齢層で居心地よかったです。

 

一応加藤くんアンドリュースが主役ということにはなっていますがほぼ群像劇。その中で設計士というアンドリュースの立場が特殊ではあるけど出番が多いとか際立って主役という感じではありませんでした。でもタイタニックの産みの親という全体を象徴するような、それは未来への希望とか人間の叡智とか技術の進歩における傲慢さとか大事な人を思う愛情とか組織の中の軋轢とか職業人としての矜持とか、作中におけるすべてを内包した存在であるからこそやっぱりアンドリュースが主役であり座長であるんだなあと鑑賞後は納得しました。どなたかの感想で今回のアンドリュースにはタイタニックを生んだという母性を感じるというのがあってまさにそれ!と思いました。

 

あとやっぱり加藤くん立ち姿が圧倒的に美しいし、誰が主役かっていったらそりゃ彼だろうという説得力がすごい。華があるってこういうことか。タキシード姿が本当に素敵だったので食事のシーンほぼ座っちゃってたのがもったいなかった。沈んでいく船の中でいまさら壁がもっと高ければ!とペンもないのに手で設計図を修正する様には狂気を感じたし、最期のソロが「秋よ」なのも憎かった。あの映画でもレオ様がやってた傾く甲板で手すりを乗り越えるやつ、手が滑ったらけっこう危ないと思うのでひやひやした。怪我無く終われますように。

 

キャスト全員すばらしかったけど、特に栗原さんエドガーと霧矢さんアリスのビーン夫妻が本当にキュートで、別れのシーンで席が下手でアリス越しにエドガーを見れたんだけど栗原さんの表情がめちゃくちゃ切なくて泣けた。いい夫婦だったのに…。こんなことがなければこの先も喧嘩して仲直りしてを繰り返して仲良く年を取っていけただろうということが想像できるだけに辛かった。霧矢さん、元トップスターなのにこういう俗っぽい役が似合うの意外でした。栗原さん素敵だったな~また別の舞台でも見てみたい。

 

エッチスも仕事中とオフの切り替えがずるいくらいかっこいいし(エドガーとタバコ吸うとことか)清濁併せ呑む大人の男感がすごくよかった。イスメイも、本来はもっと憎むべき人なんだろうけど、誰だって自分の中に彼みたいな部分がないとは言えないだろう?と突き付けられているようですごく考えさせられた。イスメイを愚かで浅はかで卑小な人間だと糾弾してもそれはそのまま自分に返ってくる。最後の大合唱でもういない人たちが希望に満ちた表情で歌う中、自分のしたことの大きさを知りつつ今更なす術もなく泣きながら歌うしかないイスメイの姿には胸を締めつけられる思いでした。禅さんはロミジュリのお父さんの時も思ったけどこういうザ・人間みたいな役が本当に上手だなあ。ベテランさんに何を今さらという感じですが。

 

テニミュの頃はひょろひょろしてた印象の相葉くんが胸板が厚くなって立派な大人の男になってたのがビックリしました。スーツ似合う!さすがアンジョラスをやっただけあって成長したんだなあ。すごいアリスといちゃいちゃしててしょっちゅうリフトしてたので、そりゃがっちりしてなきゃ無理だよなあ。

席が通路側だったのでボートのシーンで真横に渡辺くんがいて生歌が聴けたのがラッキーでした。バレットと通信士のシーンも微笑ましくてよかったし、ボートをジムに譲ってしまうバレットの朴訥とした実直さにも泣かされました。後ろでジムとケイトに救命胴衣を譲っているストラウス夫妻も。あのシーン見どころ多すぎて目が足りない。ストラウス夫妻のやりとりも全部素敵だった。アイダのドレスがすごく綺麗。

 

最初はでもみんな死ぬんでしょ?観終わった後暗い気分になるのはやだなあと思っていたのですがそれ以上の満足感というか、今年みた舞台の中で一番よかったかもしれない。トム・サザーランド演出は初めてだったんですが、暗転がほとんどないのに驚いた(暗転が嫌いだそうですね)。集中力が途切れずあっという間でした。

観終わったあともあそこがよかったなあ、あの人素敵だったなあと余韻にひたれる舞台ってそんなに多くないんだけど、タイタニックは間違いなくそれでした。また再演されたらぜひ観たいです。